− 夏色模様 −




「愛川先輩、俺。 簡単に諦めるような人間じゃないんで―――」


「――― ッッ」


まおは前田くんがいたから、今。 ――― 笑っていられる。

まおがどれだけ苦労してきたか“友達”として、あたしはまおを支えてきたつもりだったけど。



「まおを苦しめないでっ」


「俺がそんなことをするとでも?」


「まおには前田くんがいるのっ」


次第にあたしの声も熱くなる―――。



まおは人から強く言われると、断ったり出来ない。 得に……。 男子には断れない。

それに……。 耳が聞こえなくなってから、本人は気付いていないけど、少しだけ他人に恐怖心を抱くようになった。


西村くんは、まおの事を何も知らない。

知らないくせに……。 簡単にまおに手を出して欲しくない。


「西村くんは、まおの何を知っているの――― ?」


「何も知りませんよ。 だから、今から知るんです」




< 22 / 300 >

この作品をシェア

pagetop