− 夏色模様 −
「愛川先輩、俺。 簡単に諦めるような人間じゃないんで―――」
「――― ッッ」
まおは前田くんがいたから、今。 ――― 笑っていられる。
まおがどれだけ苦労してきたか“友達”として、あたしはまおを支えてきたつもりだったけど。
「まおを苦しめないでっ」
「俺がそんなことをするとでも?」
「まおには前田くんがいるのっ」
次第にあたしの声も熱くなる―――。
まおは人から強く言われると、断ったり出来ない。 得に……。 男子には断れない。
それに……。 耳が聞こえなくなってから、本人は気付いていないけど、少しだけ他人に恐怖心を抱くようになった。
西村くんは、まおの事を何も知らない。
知らないくせに……。 簡単にまおに手を出して欲しくない。
「西村くんは、まおの何を知っているの――― ?」
「何も知りませんよ。 だから、今から知るんです」