夜獣3-Sleeping Land-
どうやら、そのまま寝ていたらしい。

幾ら鍛えていたとしても、寒さで身が固まっている。

部屋の中に暖房器具がないせいか、吐く息は白い。

「風呂、だ」

近場には銭湯がある。

清潔でなければならないという事はないのだが、常に渚に言われていたせいか、癖づいてしまったのかもしれない。

身支度を整え、部屋から出る。

銭湯までの距離は五分。

年中無休で、朝早くても開いている。

部屋に風呂がないので、いつも利用している。

銭湯『村正』は人気が低迷する事なく、何十年も続いているようだ。

しかし、やっていればいいだけの話で、何年続いていようと僕には関係ない。

「いらっしゃい」

笑顔で出迎えたのは六十過ぎの老婆だ。

ひざの上には常に斑猫を乗せている。

「ああ」

僕は金を置いて、脱衣所で服を脱いだ後に風呂へと入る。

朝なので、湯は綺麗だ。

かけ湯をしたのちに湯船に浸かる。

湯の熱さが冷えた身に染みる。

「ふう」

朝のせいか、周囲には人の影は見当たらない。

そちらのほうが、考え事に集中できるからいい。

後に動かなければならないので、ゆっくりと身を休める。

乾と闘うにしろ、能力者と闘うにしろ、一時の休養も必要だ。
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