レクイエム<鎮魂歌>


気を失った妹を腕に抱き抱えてフィオーラは言った。

「モニカをここに残しとく訳にはいかないんだよ。」

聞こえるはずもない彼女にそう呟く。


「ビジィーラ、モニカの馬を頼む。」

ビジィーラと言う自分の従者に馬をこちらまで引き寄せてもらった。

その上にモニカを落ちないように横たえる。

「お前なら落とされるはずがないだろう。――モニカを頼んだぞ。」

前半は聞こえているはずもない妹に、後半はモニカを乗せている馬に向かって言った。

馬はモニカという部分に反応し耳を傾け自分の背中を見た。

そして了解したかのように嘶ないた。

フィオーラはそれを見て安心したようだ。

「いけ」

短く言っただけだが馬は颯爽と駆けて行った。

「よかったんですか?」

それまで黙っていたビジィーラが馬が見えなくなるのを待って、口を挟んだ。

「なんのことを言っているんだ。」

「一緒に行かなくて、と言うことですよ。」

「……ならお前が行けばよかったんだ。」

「嫌ですよ。俺はフィオーラ様の従者ですもん。」



< 22 / 32 >

この作品をシェア

pagetop