レクイエム<鎮魂歌>
唄は好きだ。

だけど嫌い。

矛盾してるとわかっているけれど、そうとしか言いようがない。

だってこの唄のせいで、お父様は私のことを嫌いになった。

人前でこの唄を唄うなとも言われた。

だけど、私は唄わずにはいられない。

哀しい時や嬉しい時、苦しい時に楽しい時、泣きたい時、笑いたい時。

様々な感情により変化をもたらす唄が好きだった。

その大好きな唄を声とともに封じられた時、私は我を失った。

声が出ない辛さ。
唄えない苦しさ。

心が張り裂けそうだった。

あの時から何年たったのだろう?

封じられた声は取り戻した。
だが、私は恐れた。
また、唄えなくなるのでは、と。

恐い、
唄えなくなるのが…

恐い、
気持ちを伝えられなくなることが…

勇気を持って踏み出すことが…


だけど、いつまでも立ち止まっていることはできないんだと思い知らされた。


そう、
時は動き始めた。




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