レクイエム<鎮魂歌>
今までそんな場所が存在するなんて予想もしなかった。
しかも、その場所が母の故郷だなんて。
「けれど、私がお母様の故郷に行かなければならない理由は?」
そう、なぜこんなにも急に出発が決まったのか……
「――隣国のフケート王子やその国の国王陛下が今夜お忍びで屋敷にいらっしゃることになったの。」
母親の発した初めの名前を聞いた瞬間、私はビシリ、と固まった。
「お母様、それは本当?」
信じたくなくて、母に確認をとる。
嘘だと言って欲しい!
「この期に及んで私がモニカに嘘なんてつくと思う?」
それは思えない。
だが、信じたくなかった。
お隣りの国王陛下はたびたびこの屋敷で聞く不思議な噂を確かめに、その息子フケート王子はモニカに求婚を申込に。
どちらも私絡みなのだ。
母は、娘の意に沿わぬ事を阻止しようと頑張ってくれているのだ。