=寝ても覚めても=【完】
一度面会に来ていたその弟夫婦には会ったことがある。
身重の奥方をかばうように病室から出てきた彼は、白衣の仁科を目に留めて、丁寧に頭を下げた。
言葉は交わさなかったが、主に似た顔に血縁者だろうと思っていたら、やはり弟。
飄々(ひょうひょう)とした兄貴に比べ、少し堅く神経質そうな印象を受けた。
仁科はその弟の方が仲良くなれそうだと思った。
「聞いているよ?倫子(のりこ)が入院するのなら、毎日浩毅が俺の所にも来そうで面倒だなぁと思ったんだ」
「奥方の検診で俺についでに会いに来たって、お前の話ばかりしてる」
「しばらく会わずにいて、もう俺からは卒業したものだと思っていたんだけどなぁ...」
「愛されてるね、あれは。相変わらず」