=寝ても覚めても=【完】
『どんな気分?俺がものすごく良い女に見えてきたりしてる?』
美味しい肉でも目の前にあるかのように、主は仁科の顔を期待を込めて覗きこんでいる。
女になんて見えない。
見えないのにこんな年上の男相手に欲情が湧いているなどとは言えなくて、こちらはただ黙るしかなかった。
こんな危ない薬、後で取り上げなくては。
でも、今は目を閉じてしまいたかった。
自分の呼吸が早くなるのを止められない、これも薬の効果なのか。
一体なんの薬なのかと舌先で歯の裏を舐めて見たが味などすでに無く、薄く口をあけた表情は主を喜ばせただけだった。
『何だよ、可愛い顔して』