=寝ても覚めても=【完】


翌日出勤してから仁科は宇治方先生に呼ばれ、主の弟夫婦とその子供にあった事を聞いた。

いつもは一番に向かう特別対応病室ではなく、その足で普段踏み入れる事もない別の病棟を目指した。



たどり着いた扉を開けると長細い部屋に長椅子がふたつ。

そのひとつに主が座り、祈るように組んだ手の上に顔を乗せて、硝子の向こうの病室をじっと見ていた。


視線の先では、新生児室の和やかな明るい雰囲気とは違う、重い緊張感が漂っていた。


いくつかある小さなベッドからは無機質な管が機械に向かって無数に伸び、小さな命を今生に繋ぎとめている。


そこは生まれてすぐに疾患が確認された新生児の集中治療室であり、見つめる主の目は父親のそれと変わりないように見えた。

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