神隠し

消えた絆・よみがえった縁

アタシの実家は昔ながらの和菓子屋だった。

店が始まった頃から、お饅頭を中心にアメや金平糖など、素朴なお菓子作りを職業として、代々創立者の血縁者が店を継いでいた。

すでに400年以上の歴史を持つアタシの家は、かなり裕福で、店の数も数十店舗にも及ぶ。

アタシ自身、本家の血筋で、跡取りという立場だった。

…だから、知ることができた。

本家の家の蔵にあった、創立者の日記に目を通すことが。

かつて創立者は別の土地から訪れた。

しかし身内に大きな不幸が起こり、財産を持ってこの土地へとやって来た。

そして身内の魂を慰める為に、亡くなった者達が好きだった和菓子作りを自ら始めたのだと…。

だが1人だけ、もしかしたら創立者の息子が、生き残っているのかしれないと…日記には書かれていた。

息子が好きだったのはお饅頭。その土地の神様もまた、お饅頭が好きだったから、創立者は和菓子を作り始めたのだ。

…彼等にいつか、食べてもらう為に。
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