忘却の勇者

相変わらず笑顔でこちらに向かい、あっという間にコーズの隣に付いてきた。


背中にいるシキに気がつくと、悠長にも挨拶を交わした。


「あっ、目が覚めたんですね。僕はオレオです」


「あ……嗚呼、私はシキ。王国の騎士団の将軍だ」


「その若さで? 凄いですね」


生命の危機に立たされているのに、なにを和やかに会話しているんだこいつ等は。


コーズは一喝してやりたい気持ちで一杯だが、人一人担いだ状態で全力疾走しているため大声が出せない。


オレオを叱るのは後にして、まずは後ろで異様なまでのプレッシャーを放つ魔物をなんとかしなくては。


ポーチに手を伸ばし、ある物を取りだす。


手のひらに収まる丸みを帯びた金属の固まり。


閃光弾。しかも対魔物用の強力なやつ。


口で安全ピンを解除すると巨大な魔物、コーズが勝手に命名した大魔獣ベモスの顔面目がけて投げつけた。
< 105 / 581 >

この作品をシェア

pagetop