忘却の勇者

女性は手を顎に当てて考え込む。


眉間に皺を寄せながら考え込む様から、あまり良い回答は得られないだろう。


「賢者かどうかはわからないけど、岬に住んでる老人はいたわねぇ。幼い孫と二人で暮らしているとかなんとか」


きっとその人だ。


幼い孫というのに少し引っかかったが、その老人がサイのいう東の賢者に間違いないであろう。


「その人についてなにか知ってることはありませんか? 噂でもなんでもいいので」






―――オレオが東の賢者について情報を集めている最中、コーズは市場で魔具を入手していた。


野外にずらりと並んだ野外市場。人通りも激しく、アデイの町の中でも一際賑やかな所である。


地面に敷かれたシートの上に無造作に置かれた魔具の数々は、どれも他の地方では目にすることが滅多にない代物ばかり。

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