忘却の勇者

「そんなに大事な兵士なら、末端の騎士なんか送らないでお前自ら行けばいいじゃねえか。鉄血の十三騎士の初期メンバーであり、四聖官と同等の力を持つという上位メンバーのケイ様御本人がな」


またコーズったら失礼なこと言って。そろそろ注意したほうがいいかしら。


溜息を洩らしながら窘めの言葉を紡ぎだそうとしたが、それより先に小さな笑い声が執務室に響いた。


声の主はケイ。


笑いは徐々に声量をまし、腹を押えて目じりには涙が滲み出す。


コーズの憎まれ口を完全無視してきたケイだが、ついに堪忍袋の緒が切れてしまったのだろうか。


恐々とするマリだが、どうやら彼女が考えているようなことではないらしい。


入り口に立つエクターも、口元に手を当てて笑いを堪えていたのだから。


ど、どういうこと?


ようやくケイの笑いが収まると、彼は目じりに溜まった滴を拭い、落ち着きを取り戻すように息を一つ吐いた。


「いやー済まない。どうやら君達はずいぶん大きな勘違いをしているようだね」
< 270 / 581 >

この作品をシェア

pagetop