忘却の勇者

あからさまに落ち込むコーズに、二人は顔を見合わせると小さく吹き出し笑みを溢した。


なんだかんだ言いながらも、コーズが無事で嬉しいのだ。


だけどこの程度で許してやるつもりは毛頭ない。


自分達が受けたショックはこんなもんで晴れるほど浅くないのだ。


その後も数々の罵倒を浴びせ続ける若き勇者と若き騎士。


二人のコーズいじりは当分続くことになるだろう―――






何者かに身体を揺らされ、意識が急速に現実へと呼び戻される。


会議室には西日が射し込み、部屋の中を茜色に染め上げる。


上体を起こしてうーんと背伸びをすると、マリを起こした女性がクスクスと笑い声をあげた。


「お疲れのようですけど大丈夫ですか?」


軍服を纏った女性が声をかける。
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