忘却の勇者

嗚咽が交じりながら発した言葉は弱弱しく、二の句を続けることは出来なかった。


―――なんでそんなに悲しい声を出すのよ。


貴方に落ち度はないんだから、もっと堂々としてればいいじゃない。


ヒステリックな女の自己満足だと割り切って、嘲笑えばいいじゃない。


なのになんで、今にも泣きそうな顔をしてるのよ―――


ケイを傷つければ傷つけるほど、心が痛み悲鳴を上げる。


最後にコーズの遺体を一瞥すると、


「遺体はこちらが責任を持って処置する。気持ちの整理が出来るまで部屋も自由に使ってくれて構わない」


そう言い残し、元来た道を引き返した。


「う……うぅぅぅぅぅぅ……!」


声にならない悲鳴が、ケイの背中を見送った―――



< 322 / 581 >

この作品をシェア

pagetop