忘却の勇者

天井から注ぐ淡い光。


シャンデリアに灯されるロウソクの淡い光がゆらゆらと揺らめき、不思議と心が落ち着いた。


これから最終決戦だというのに、おかしな心境だ。


先ほど数え切れぬ魔物を殺め、全身に返り血を浴びたこの身体。


アドレナリンによって滾った勇者の血が、スゥーッと全身に行き渡り頭を冷やす。


安堵しているのかも知れない。


これで全てが終わるのだ。


勇者の使命が終わる。これまでの犠牲が報われる。


知らず知らずに積もりに積もった肩の荷を、ようやく下ろすことが出来るのだ。


聖剣を強く握り、ある一点に視線を集中する。


一つだけ背中を向けている椅子。


余裕だな。とオレオは思う。

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