忘却の勇者

サイの横を通り、王座に腰かける魔王の元へ。


腹部からは気持ちの悪い血液が滝のように溢れていたが、今では出血が治まり落ち着いている。


流石不老不死。だがサイに敗れた結界は再展開出来ていないようだ。


「出来れば正々堂々と戦いたかった。けど僕は弱いから、こうでもして君を倒さないといけないから」


聖剣を首に宛がうと、接触面の皮膚が沸騰し焼けただれる。


聖剣の力は健在。後は首を刎ねればいい。


それで、人と魔族の争いに終止符が打たれることになる。


「元より死んだ身だ。今更死に際などに拘らぬ」


魔王は安堵の笑みを浮かべると、


「黄泉の国で待っているぞ」


そう言い残し、永久の命を絶ったのだった―――






< 557 / 581 >

この作品をシェア

pagetop