かさの向こうに縁あり
私は縁側にぽつんと座っていた。


何を考えているわけでもなく、無心に。



『――大丈夫?』



そんな男性の鮮明な声が耳を掠める。


ふと無意識に左に振り向く。

そこには羽織袴姿の男性が、私を見て立っていた。


そして彼は静かに私の隣に座った。



妙にリアルだけれど、ここは夢の中だ。



白いワンピースだと思っていた服は、本当は白い着物だったみたいだ。

着流しのような、襦袢のような感じで、薄く晒のような素材だった。


それが風に靡いて、ワンピースだと錯覚していたらしい。

夢の中では感覚が鈍るみたい。



『無理はしないでよ?本当に心配なんだ……』



再び男性は言葉を紡ぐ。


優しく悲しげな声の持ち主の顔は、何故だか見えない。

でも、昨日も夢の中で聞こえた声だ。



いつもの夢にはなかった、新しく明色豊かな風景。



やけにリアルで、不思議な雰囲気を纏っている。

自然と何とも言えない気分になる。



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