かさの向こうに縁あり
「お、寝顔が可愛い奴だなー」


「いや、こりゃあなかなかの別嬪さんじゃねえか」



周囲がやけに賑やかだ。


どうしてこんなに賑やかで、人の安眠を妨げるほど五月蝿いんだろう。


しかも何人かの男性の声。

目を開けるにしても開けたくない。


もう少しぐらい寝させてくれたっていいじゃない、なんて思うだけでも無駄かもしれないけれど。



「それにしても肌白くて綺麗だな。触っても……」


「こら、やめてって!起こしちゃうでしょ」


「何だよ。つれねえなあ、平助」



『平助』――…


その名前を耳にして、思わず右手の人差し指がぴくっと僅かに動く。


私をあの引剥ぎの男性三人から助けてくれた人も、今この場にいるみたい。


それだったらもう少し静かにしてくれてもいいんじゃないの?


そんな伝わらない気持ちを表す為に、私は仰向けになった体をわざと少し動かしてみる。



「ほら、起きちゃうでしょ!」


「分かったよ!もう出てくから、それでいいだろ」



おかげで何人かの男性は、藤堂平助だけを残して部屋から出て行った。



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