かさの向こうに縁あり
「――もう……何なの……」



気づけば私はそんな寝言を漏らしていた。


寝言と言っても、寝ている状態で言葉を発したことを自分で分かっているという、たまに経験するものだ。

何故かそれだけはっきりと聞こえてくる、そんなやつ。


正直もう夢の内容なんてどうでもいいんだけど、なんて気持ちも抱きつつ、私はまぶたを押し上げる。

相変わらず天井は木造のものだ。



「今日も変わらず、ですか」



変わらない風景、変わらない日常。

それは、普通だったら嬉しいことだろうと思う。

夜寝てから環境も何も変わることなく夜が明け、起きたらまた同じ場所で、おそらく平穏な1日を過ごすことができるのだから。


でも今の私は、変化を望んでいる。

朝、夢から目覚めると元の世界に戻っていたら、と思ってしまう。


別の世界で、たとえどんなに素敵な出会いをしたとしても、その出会いがあればそこで生きていける、なんて私には到底できないことに気づく。

本当は元の世界が好きだったんだ、なんて思ったりして。



「……やっぱり帰りたい、のかも」



ぼーっとして呟く。

平助がいたとしても、きっとそれは変わらない……のかな。



「……そうだ、平助は――」



ふと気づいて、その名を呟く。


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