かさの向こうに縁あり
そんな時。

いつもここで、誰かに呼ばれる。



『――む……せひ―――…』



少し低めの男性の声が紡ぐ私の名が、途切れ途切れに聞こえる。

全ては聞こえない。


一体誰が、私を呼んでいるのだろう。

しかも、夢の中で。



『――大丈夫……?』



二度目には必ずその言葉が鮮明に聞こえる。

同じ声の持ち主なのだけは分かる。


それ以上は何も分からない。


所詮、夢の中だから、分からなくても現実味を帯びていなくても仕方ないこと。


そんな風に理解を諦め始めた時、視界が黒から赤になった。



―血――…



鮮血の赤が広がる空間になってしまった。

夢の中ながらも、ただ素直に怖いと思う。



いつもの夢にこんな続きはない。


誰かが続きを紡いで私に見せている気がする。

私が夢の中で死んだ気も、する。



そんな、至極嫌な夢。



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