かさの向こうに縁あり
平助は心配そうに見つめ、私がそれに気づくと両肩を掴んでいた手を離した。



「どうかした?」



私がここから逃げたら、さっきの副長とかいう人が捕まえて、きっと私を殺すんだ。


だから今は言うことを聞いているしかない。

それに、平助とは仲良くしなければならない。


苦笑を浮かべて、軽く首を横に振る。

何でもない、と言うように。



「何かあったら遠慮なく言ってね。まぁ、男所帯だから嫌かもしれないけど」



“人斬り集団”だという上に男所帯だなんて、私にはさすがに耐えられない……って。


男所帯!?



「え、何?どうかした?」



そんなことを今更言われて、どうかしない方が可笑しい。


男所帯ということはつまり、ここに女は私一人しかいないということ。


そんなことなら、今夜にでも早く出て行かなければならない。



「じゃ、俺は隊務があるから行くよ。またね」



私の返事も聞かないまま微笑んでそう言うと、すっと立ち上がって部屋を去っていった。



静かになった部屋に、外で新選組の人達が張り上げる声が響く。

もう考えることは一つしかない。




ーー今夜、ここを脱け出すことを。


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