君はガラスの靴を置いていく
俺は千花に一行の返事を返して携帯をカバンへと放り投げた。その様子を悠里は伺うように見つめている。
『先輩、彼女と上手く行ってるんですか?』
この上目使いは絶対可愛いと分かっててやってる。自分の見せ方を知ってる感じ。
『なんでそんな事聞くの?』
『えーなんとなくです。私、ずっと先輩に憧れてたんですよ。だからこうして話せてるのが嬉しくて』
上目遣いに甘えた喋り方。これは男がどんな女が好きか熟知してる証拠。相当男と遊んでるなこれは。
『へぇ、悠里みたいに可愛い子に憧れられるような事してないけどね』
『私、先輩の顔すごい好みなんですよ。学校で見た時ビビビッって来たんです』
『それってみんなに言ってるでしょ?』
『先輩だけですよ』
なんとなくやりづらい。まるで合わせ鏡で自分を見てるような感覚。簡単に言えば悠里は俺の女バージョンって感じ?
どっちにしてもこんなのに引っ掛かる程、俺は馬鹿じゃない。
悠里は俺の隣で体育座りしながら、長い足を交差させた。半乾きの髪の毛を耳にかけて俺との距離を詰めてくる。
『聞いたんですけど彼女ってけっこう真面目な人らしいですね。ちゃんとデートとかしてます?』
『あー、なんか夏期講習で忙しいらしいよ』
『勉強ですか?せっかくの夏休みなのに。じゃぁ、先輩暇なんですね』
クスッと口角が上がる口元とまつ毛の長い綺麗な瞳。高校1年でこの色気はやばいだろ。同級生に見習わせたいぐらい。
『なに、遊んでくれるの?』
『先輩の為なら私なんでもしますよ?』
なんでもって意味分かってんのかな。こんな可愛い子に言われたらみんなすぐに落ちるんだろうな。
まぁ、俺は浮気とかしないけどね。