君はガラスの靴を置いていく





学校から離れ、同じ学校の生徒の姿が見えなくなると糸井千花はやっと顔を上げた。

周りの景色に目を向け、顔に当たる風が感じている




『…………ねぇ、宮澤君。な、なんか方向間違ってない?』


-------------やっと気づいたか。けっこう前から駅とは反対の方向に走ってたんだけど。



『このまま帰るのもったいないから遠回りして行こうよ。この後、用事とかないよね?』


本当は初めからそのつもり。

だって駅とか普通に走れば10分で着いちゃうし。



『………………用事はない、けど……』


そんな小さな声が返ってきた。

俺は少しスピードを落として、ゆっくりとある場所に向かった。それは学校から離れた所にあるとっておきの穴場。


そこへ向かう途中、俺はある事を糸井千花に言った




『……………ねぇ、千花って呼んでもいい?』


距離を詰める第一段階。そもそも女を“ちゃん”付けするのに慣れてないから自分がやりづらい。



『……………え…えーと……うん、いい…けど』


後ろで顔は見えないけど、多分真っ赤になってるんだと思う。

俺は許可を貰ったから早速名前で呼んでみた。



『---------------千花、着いたよ』




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