君はガラスの靴を置いていく




つまり本当の父親に会いたくないから時間潰しが必要で、昨日見せた涙の原因もこれなのだろうか。


『なんかよく分かんないけど家に来たら今の父親と鉢合わせになったりするんじゃねーの?』

『あ、それは平気です。出張続きでほとんど家に居ないし、元夫が家に来ても今の父親は何も言わないですよ~。母もいまだに彼氏何人もいますしね』


あー、そうですか。

やっぱりDNAは侮れない。自由奔放の家庭事情にこっちの常識は通用しないらしい。


『でも別に俺じゃくても暇潰ししてくれる男はいっぱいいるだろ』


一応今朝まで熱あったしうつる可能性もあるじゃん。わざわざ家に来なくても誰かに迎えに来てもらってドライブでもした方が良かったと思うけど。


『いますけどこんな話できるの先輩しかいません。だって落ちてる自分って魅力ないじゃないですか』

『?』


『見た目+いつもニコニコしてて明るくて人懐っこい私じゃないと駄目なんです。「おいしー」とか「すごーい」とかを大袈裟に言う子が可愛がられるんですよ。だから私の過去とか家族関係を話したところで冷められるだけです』


多分悠里は仮面みたいに色々な顔を持っている。

臨機応変にそれを付け替えて、相手が望む自分に簡単に変身できる女なんだと思う。




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