君はガラスの靴を置いていく






その帰り道、俺は自転車で夜道を走っていた。
空気が生暖かくて夏の匂いがする。

こんな日は家に帰らず、夜な夜な遊びに出掛けたい。日中は暑いけど今は涼しいし。


--------そんな事を思っていると、ポケットの中の携帯がバイブしているのに気付いた。



『もしもし、どうした?』


それはまる。電話の向こう側はなんだか騒がしくて声が聞き取りづらい。



『あ、宮澤?今利根川の川沿いで花火してるんだけど来ない?』


確かに電話には花火の音が聞こえてくる。



『洋平~、待ってるからおいでよ』

『早く来ないと花火なくなるからな』


後ろの声の主達はおそらく同じ学校の奴等。そう言えばそろそろ花火やりたいって教室で話してたっけ



『今から行くから待ってて』


俺は自転車のスピードをあげた。


遊び事の誘いなら断る訳がない。丁度、遊びに行きたいと思ってたし。


ここからみんなの居る場所までは15分ぐらい。
制服のままだけど着替えて行くの面倒くさいからこれでいっか。



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