君はガラスの靴を置いていく
『別に何もしないよ?ただこうしてるだけ』
なんとなく台所に立つ千花が可愛く見えたから。
千花は何も言わず、肩に力が入っている様子。
『さっきの話だけど千花って怒ったりしないの?』
『え……ど、どうかな。怒る時もあるよ?』
俺も千花が怒る姿を想像出来ない。こうして強引に抱き締めても文句の一つも言わないし。だからちょっとだけ意地悪を言ってみる。
『俺さ、この前増田の家に行った時女子も居たんだけどどう思う?』
束縛されるのは嫌い。でも千花がどんな反応するか見てみたい。
『……私、まだ宮澤君が彼氏って実感がなくて…
宮澤君がたくさん友達居るの知ってるし、勿論女の子の友達も。だから私の感覚で宮澤君に色々言うのはどうなのかなって………』
『俺は千花が彼女って実感あるよ?だって理由がなくてもこうして二人きりになれる』
それに、触れるのだって彼女なら理由はいらない。
『俺は千花に怒られてみたいかも。だってその方が特別って感じがするじゃん?』
『そ、そうなの?慣れてくれば怒る事もあると思うけど………。』
『じゃぁ、これから色んな千花を見せてよ。それともう一つ』
俺はクルッと千花をこちらに向かせ頬を触った。
『宮澤君じゃなくて洋平って呼んでよ』
付き合ってるのに名字なんて、なんかよそよそしいじゃん。
『えっと………洋平、君?』
千花は恥ずかしそうにうつ向く。本当は呼び捨てで呼んでほしいけどこの調子じゃすぐには無理そう。だからまぁ、徐々に。
『キスしていい?』
『だ、駄目だって、みや……洋平君』
とりあえず、今日はこの辺で。一歩前進ぐらいはしただろ。