夜想曲
 そんな時期に、親しくなった男の子がいる。席が、たまたま隣になっただけなのだが、これがまた、お笑いコンビのようにベストな組み合わせだった。名前は、コウジといった。
コウジは、顔も整っていて、毒舌で、話していておもしろかった。しかも、わたしをかまってくれる。
 わたしは、ツキカワという姓なので、みんなからツッキーと呼ばれていた。コウジは、わたしの面白いところを次々引き出してくれた。だから、コウジといると、暗い暗い本当の自分を忘れさせてくれるようだった。
 同じクラスには、仲のよいナミという名前の女の子がいた。ナミは、顔も本当に可愛くて、性格も良くて、みんなに愛されるアイドルのような存在だ。ナミはみんなにナミちゃんと呼ばれていた。わたしもちゃんづけで、しかも下の名前を呼ばれてみたかったけれど、それは夢に終わった。
 ナミとわたしは、一緒に図書委員をしていた。当番の日は、放課後、図書室の受付で、座って、貸出返却の処理をした。二人並んですわっても、おしゃべりはできない。しーんとした空間のなか、勉強や読書に励んでいるのだから。暇なときは、筆談をしていた。
 髪は、毎日洗っているか、これから帰り道どこかよっていかないか、とか、そんなやり取りをしてた。なんという平穏な時間だろうか。
 ナミは、本当に人気があった。男女問わずだ。だから、しょっちゅう、男の子から、交際を申し込まれていた。こうして、図書室のカウンターに座っているときも、ナミは、男の子から手紙を渡されたりするのだ。そのたび、こまったなあ、という表情をしているナミ。本当にいいこで、一緒にいるとほっとする存在。わたしが男だったら、ナミのこと好きになるだろう。同じ図書委員で、二人ならんで座れてうらやましいだろう、なんて、優越感に浸れるのだ。

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