夜想曲
わたしは17歳だったころから、毎日、悲しかった。毎日泣いていた。泣くのは決まって夜だった。
 太陽が出ている間は、不思議と、悲しさを感じないのだ。太陽にはそんな力がある。
 でも、月には、より悲しくさせる力があるようだった。というより、月明りは、わたしの本当の心を呼び起こしていたのだと思う。家の近くには湖があり、そらに浮かぶ月。そんな夜は、湖畔へ行って、水面に映る月を見る。すると、更に悲しくなって、涙がでてくるのだ。
 そんな感傷的な面を持ちつつも、わたしは、昼の顔はひょうきん者だった。そのように振る舞うことで、暗い自分を隠せるからかもしれない。
 とにかく、面白おかしくしていると、楽なのだ。その代わり、一日がとても疲れるけれど。きっと、誰でもそうなのかもしれないのだ。

 17歳のころ、私は高校生だった。そのころ、制服のスカートは膝上が主流になりかけていたころで、脚に自信がある女の子は、スカートがどんどん短くなっていった。
  一方わたしは、スカートは長く、ふくらはぎが隠れるくらいにしていた。周囲からは浮いていたけど、脚を見せるくらいなら、浮いていたほうがましだった。
 顔は、そんなに不細工じゃないと、自分では思っていた。でも、周りの女の子よりは、全然可愛くないっていうことは知っていた。
 高校は男女共学だったから、なおさらコンプレックスを感じていた。かといって、ダイエットや、お化粧などにも興味がわかず、そんなことをする時間ももったいないと感じていた。だいぶ、矛盾しているのだ。

 


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