雪月花~死生の屋敷
どうしよう…まだ入り口に入っただけなのに。

どうして雪月花はこんな作りをしているのよ…。

次第に、悲しみにも似た絶望を感じる。動いても仕方ないと言わんばかりのこの状況の中、私はついにその場に腰を下してしまった。

疲れないし怖くもない…。それがかえって変な気分にさせている。

どう考えてもおかしい。色武さんは確かにこう言っていた…雪月花の屋敷の中は、見た目よりもずっと広いと。

でもいくら広いとは言え、入口の先にこれだけの廊下を作る意味などあるのか?

おかしい…明らかに変。

私は身に着けている数珠を手で触れてみる。色武さんが私にくれたお守り。

実際にどんな効果があるのかは解らないが、これを触ると何となく落ち着く感じがする。

特別恐怖を感じている訳ではないけど、この丸い石のひんやりとした冷たさは私に心地よさを与えてくれる。

とは言え、数珠を触ったところで状況は何も変化をしない。何気なく私は色武さんに貰ったもう一つの代物をポケットから取り出した。

通称『断』の札。霊魂の切なる願いを引き出す道具…。

その札を手に取り見てみると、貰った時には何も書いていなかった札に、文字が刻まれていた。

『母親』と『優しさ』…それに『遊具』。

「母親?…優しさ??遊具???」

この三つの単語が表す意味って…。

「子供…なのかしら。それも幼い子供よね。もしかしてこの状況って…霊魂の仕業?」

雪月花に入って早々、霊魂が私に何かしらの攻撃をしかけてきたのかしら。そうでないにしろ、近くに霊魂が居るのは間違いないようね。

でないとこの断の札が反応するわけないし。
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