雪月花~死生の屋敷
暗い廊下をひたすら進み、前だけ向いて歩いていた私だけど、この時私は振り返る。

振り返るとそこには当然のように、暗い通路が視界に入る。

前を向く…そこには暗い通路が目に入る。

窓もなければ光も射さない。木目を刻む木造りの廊下と薄汚れた石膏の壁。

雪月花に来る前に私が不安を感じていた事は、悪い霊魂の攻撃。だけどいざ来てみると、霊魂の姿などどこにもなく、ただ一本道の道に迷った感覚…。

これはなに…?

一度引き返そうと考えた私は、来た道を引き返す事にした。

そしてまた歩き出した。


引き返す…道を。

1分…3分……30分。

時間の感覚が解らなくなっていた私は、歩いた距離よりも戻った感覚を感じる。

実際、私は進んだ距離よりも戻ったはずだった。

でも入口に到着する事などなかった。見栄えの変わらないこの見慣れた光景が目の前に広がるだけ…。

物音一つしないし、風の音なども聞こえない…。

視線も感じないし、重々しい感じもしない。

ただ…一本道の廊下に迷いこんだだけ。

そのあと私は、行ったり来たりと道を歩き続けた…。

どれだけ歩いたかも解らないほどの時間を歩く。

すでに私は、どっちが進行方向かも解らなくなっている。

いま私は道を戻っているのか…それとも進んでいるのか。

次第に私はどうでもよくなってきた。恐怖も感じないし、疲れも感じない。

それが私を無気力な感覚に陥れていた…。
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