雪月花~死生の屋敷
でも事故というものは、自分の不注意だけが原因で起きる事ではない。加害者が居て起きる事件こそが事故…。

孝也の運転する車は、事故に巻き込まれてしまいました。

先の見えない急カーブ。外側を走っていた孝也の車に内側からスリップしたトラックがこちらに突っ込んでくる。

外側はガードレールはあるものの、それを超えた先は急斜面になった崖。落ちれば死は免れない状況。

とっさの判断で孝也は、サイドブレーキを引き無理やり後輪をスリップさせた。その機転で車は大きく円を描くようにスリップをした。だがそのおかげで正面からの衝突は避け、車のリアの部分にトラックと接触した。

その時の衝撃で孝也の車は反転し、運転席側からガードレールに突っ込む。私はシートベルトを締めていたものの、強く頭を強打した衝撃で、脳震盪を起こしかけていた…。

だが孝也は私よりももっと重症だった。エアバックというものは、助手席側のバンパーの裏に衝撃を感知するセンサーが搭載されている。だが孝也の車は運転席側から衝突したので、センサーが感知しなかった。

それに加え、事故の衝撃で運転席側のドアが完全に変形し、孝也の体を圧迫していた。

この二つの不幸が孝也の体を痛めつけた。全身打撲で意識を無くしかけていた。それと最悪の不幸がもう一つ…。

車が小さなきっかけ一つで崖に転落するギリギリの状態だったのです。

そんな中、トラックを運転していたオジサンが、急いで車から降り、車に駆けつけてきた。オジサンは助手席側のドアを開けようとしたのだが、ロックがかかっていて開けられず、窓を何回も叩いていた。

孝也はその音に気づくと、運転席側にあるスイッチでロックを外す。その音に気づいたオジサンは、急いで車を開けるとこちらに声をかけてきた。

「大丈夫か!本当にすまなかった。すぐに助けるから待ってろ」

オジサンは、怪我が酷い孝也を先に助けようと動き出したのだが、そんなオジサンの行動を孝也が制した。
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