雪月花~死生の屋敷
「私も鳴海さんを送り出したはいいものの、やはり気になりましてね。僭越ながらあなたの足跡を追わせていただきました。ちなみに声だけを送っていますので、私の姿はそこにはありませんよ」

私の困惑を見抜いていたのだろう。色武さんは最後にそう言葉を付け加えた。

「そうなんですか…えぇっと…」

「秘密です」

「はぁ?」

何から聞こうか思案を巡らしていた私に、色武さんは先手をうってきた。

「どうやって語りかけているかは秘密です」

「……はい」

悪い人ではない。それはわかるのだけど、自分の事は何も語らない色武さん。

かなり気になる事なのに、出鼻を挫かれてしまうと何も聞けない。

流されやすい私の性格をかなり熟知している様な気がする。

「それでは女の子が言いたい事を教えましょう。その場所は過去と向き合う場所で、『回廊の夢』と呼ばれる場所です。その回廊に上も下もないのです…道は自ら切り開く。時間を取り戻す為の選択をしなくてはいけません」

自ら時間を取り戻す?

「女の子が鳴海さんに伝えたいのは、今まで頭の中で様々な過去と向き合ったのではないかと言う事だと思います。過去と向き合い、心の中で答えを見つけ出す事が道を切り開くのです。それと鳴海さんが危惧していた落ちたら死ぬという件ですが、おそらく死ぬことはありません。雪月花では死という概念は存在しませんから」

「えっ?ちょっとそれはどういう事ですか?死がないとはいったい…」

過去と向き合い答えを見つけ出す。それすら理解が難しいのに、死の概念がないとはいったい…。

私が独り言を言っている姿を不思議そうに見つめるユキちゃん。だがユキちゃんはその事を私に聞く事はなかった。

「雪月花では時が進まないのです。時が進まないのだから、疲れも感じないし眠気も感じないのです。なので死が訪れる事がありません…そして物理的な要因で死を迎えることも同じくない。そして回廊の夢の間では、時が進まない代わりに、時を戻す事が出来るのです。それを手っ取り早く確かめる方法が、そこから飛び降りる事に繋がるのですよ」
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