ノイズ
目だけを動かして肩の辺りを見ると、視界の端に黒い物が見えた。


多分、あの子の頭だろう。


顔は見えないから表情まで窺い知ることは出来ないが、この気配は間違いなくあの子だ。


底知れない闇の中にいるような禍々しい邪気。


そして、凍り付くような恐怖。


この危機的状況を文也に知らせようと、可奈は声を限りに叫んだ。


だが唇から声は聞こえず、ただ金魚のようにパクパクと動いただけだった。


しかもどういう訳か文也は全く気付かず、ドンドン廊下を歩いて行く。



苦しい……



あたし……ここで死んじゃうの……?



苦しくて、悔しくて思わず涙が溢れ出た。

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