ノイズ
可奈の背中に悪寒が走り、ざわざわと肌が粟立ってくる。


闇の住人が見えるのは可奈だけ。


同じ景色を眺めていても文也には何も見えない。


道路の真ん中でボール遊びをしている女の子。


ふわふわと浮かんでいる生首だけの男。


見知らぬ家の壁に向かってブツブツ喋り続ける老婆。


みんなこの世の住人ではなかった。


可奈が一言も喋らなくなったので、文也は心配になった。


「可奈、疲れたのか?」



「ううん。ちょっと頭痛がするだけ」



闇の住人たちの存在を否定し、現実の世界に集中していると、どうしても頭が痛くなってしまう。


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