あの白に届くまで


いつか、誰かにしてみたい。
誰かと共有してみたい。
そう思った話だったから、日向先輩への手紙の中にも書いてしまった。




「懐かしい?」

「ママが好きなコトバ。ワタシも好き」


ソニアはベランダのフェンスにもたれかかりながら、俺を見上げた。




懐かしい。

日本人が好きなコトバだけど、
英語にはそれをぴったりと現す単語がないらしい。


というよりは…

その感覚自体がよく分からないらしい。



「nostalgia、はあるけど」



ソニアがそう言うから兄貴から電子辞書を借りて引いてみたら、
nosalgiaは「郷愁」だった。


失われた過去を慈しむ気持ち。



…でも、なんか、ちょっと違うな。



悲しいだけじゃなくて、でも悲しいときもあって…
なんとも言えない切ない気持ち。


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