みにくい獣の子
じゃれる
「オオカミ?オオカミ…嘘、あれ犬じゃないんですか!?」
「うん、ボクちょっと動物には詳しいんだ。あのこは少なくとも純度70%以上の狼。ただ、狼は一応人間にはなつかないんだけど…」
田中さんはうーん、と唸った
「ボクの姿見た瞬間飛びかかってきて、尻尾振って舐めてきたんだよねー」
「犬じゃん」
みにくい獣の子
第5話
「どっかの動物園から逃げだしたんでしょうか」
「さあ…ボクのとこには連絡着てないよ」
「へえ、そうなんですか」
…何者なんでしょう、このおっさん。どうやら動物が逃げると彼に連絡が来るという。
まあ今は田中さんより先にこの狼についての方が気になる。最初、何故私の家に体当たりしていたのだろう。しかも、怪我まで負った身で
「も、もっかい見てもいいですか?狼ってあんま見たことないから…」
「どうぞ、でも気を付けてね」
ドアを開けて一番に現れたのは、赤茶の毛で覆われた体の大きな
「ぅわ、や、!!」
「山岡さん!」
どすっ
「ぐっは、」
狼が、私の腹に体当たりをぶちかました。
あまりの勢いに尻餅を衝くと、狼は私の上に乗って鼻を盛大に鳴らして顔を舐めた。
うわ、すごいとげとげしい牙見えた
「や、やめ」
重い体がのしかかり、もがいても抜け出せない。田中さんが体を抱えて持ち上げようとしているが、無駄に終わっている。
「くーん」
「甘えた声出すなよう!」
狼はぐいぐい体を押し付けてきて、すんすん鼻を鳴らす。重いし怖い。
そして、狼からケモノの匂いというより、なにか爽やかな甘い匂いがした。いやそんなことはどうでもいい!怖い!