みにくい獣の子
依存する
2人でくるくるフォークをまわす
「おーかみ?」
「そう。ウチのドアに体当たりしてきたの」
「へー、おーかみ?」
「信じらんないよね。狼初めて見たもん」
「やべーなそれ。怖かった?」
「最初はね。でもあんまり犬と変わんなかったよ」
「みさきさんが食われなくて良かった」
「あ、狼って肉食だっけ」
みにくい獣の子
第6話
相変わらず素晴らしい出来であるリクの料理を頬張りながら、私はサスペンスドラマの始まったテレビを消して昨夜のことを懸命にリクに話した。
リクは大層驚きながら、話を聞いてくれた
「そんで狼は?」
「逃げちゃったのよー」
「どこに」
「分かんない。ウチを出て右手にだだーって」
あの時、あの狼は何か思い出したように走って逃げていった。本当に、なんだったんだろう?
「へー…」
「てゆーか、リクは…何してたのよ」
「へ?オレ?」
間抜けな声を出す彼を睨む。リクはただの成り行き上な居候だと思っていたが、最近そうでなくなってきた。
「リクのこと、もう少し知っておかないと面倒でしょ?…一緒に暮らしてるのに」
「……同棲みてぇ」
「おう、今すぐ出ていきたいか」
「あ、明日の晩御飯はパエリア作りますから…!」
リクが頭を素早く下げたので、私はその額を人差し指で押し返した
「…言いたくないの?」
リクは気まずそうに俯いた。あまりにも申し訳なさそうな顔をしていて、何も言えなかった
長い沈黙が流れた。言いたくないなら私も訊かないよ と言ったが、リクは悩んでいるようだった
「昨日は…」
重く口を開いたリクに、少し緊張する。しかしリクはすぐに言葉につまって、止まった
「…いや、私もそこまで訊きたい訳じゃないんだよ?ただ、ちょっと心配になっただけだからさ」
「あのさみさきさん、…俺のこと好き?」
リクは親指と人差し指と小指をたてて、私を上目遣いで見た
唐突な質問に、少なからず思考が停止する