みにくい獣の子
みさきさんにハンドバッグで後頭部をぶたれて下を向くと、デパートの床に視線が固定された
「あ100円見っけ」
「(ラッキーなやつ)」
スタスタと道を進むみさきさんを見失わぬよう少し後ろを付いて行く。俺は人混みが苦手だから、この建物に入るのは2、3度目。はぐれたら最後、携帯を出動させないと彼女との再会は望めないだろう。
「あ、これイイなあ、買おう」
「早っ」
「あたし、欲しいって一旦思うとすぐ買っちゃうんだよねー」
「…俺はこっちの緑のほうがスキ」
「そぉ?そんならこっち買おうかな~」
…何でもいいんかい
ツッコミを飲み込んで、楽しそうな彼女を見守る。と、彼女が手招きしていた
「どしたん」
言うなりみさきさんは俺の肩に青いカーディガンを引っ掛けた。わりと派手な色だが白いロンTには映えた。薄手のわりに暖かい
「…うん、似合うなあ」
「どーも。この店はmen'sも置いてるんね」
「lady'sとmen's一緒に買うと値引きしてくれるんだって」
「あはは、ちょーカップル目当てじゃん」
「買いましょよ」
彼女は俺から上着を取り、「コレじゃ嫌?」と首を傾げた。なんて強引な人だ。
「買います。」
「よし。」
意気揚々とレジへ持って行った。
おサイフを取りだそうとした俺の手を押さえてみさきさんは諭吉と野口'sをぺろんと出した
「いーよ、あげる」
「……なんでっ」
「なんとなく」
「え、え、え、」
「さぁて、次どこ行こうか」
「みさきさぁんー!」