みにくい獣の子
舐められる
私の知らない、リクの事実?祐という男の子は静かに落ち着いた声で語り出した。
『僕は、リクに断らずにこういうことをするのは初めてなんです。…かなり賭けに近いんですけど』
「あのさ、さっきから抽象的すぎてよく分かんないんだけど…?」
『僕とリクの進路が違うから、焦ってるのかもしれないですね。高校卒業したら、僕は引っ越すんで』
何言ってるんだ、この子。
本題に触れてるのか触れてないのか、よく分からない。
「…はぁ、」
『分かりやすく言えば、僕みたいにリクをフォローする人間が新たに必要ってことなんですけど。それを貴女にお願いしようかと』
「……何、リクは乖離症状以外に重い病気でも持ってるわけ?」
健康優良児に見えるけど、やっぱ色々あるんだな、リクって。一緒にいても全然分からないもんなんだなあ…
『いや、乖離症状って嘘ですから』
「…え?」
みにくい獣の子
第10話
『まあ…リクを嫌いになるかもしれませんけど、それならそれで構いませんよ。家から追い出しちゃってください』
「え、あの、」
なんかすごいこと言ってるぞリクの友人。完全に話に着いていけなくなってきた。
『でも貴女、リクの彼女でもないのに一緒に暮らしているんですよね。大丈夫ですよ』
「ねえ…、早く教えてくれない?」
煮えを切らした私が少しきつめな口調で言うと、電話越しに小さく笑い声が聞こえた。
なんで、笑った?
『分かりました。リクは今僕の家にいるんですけど…そっちに連れていってもいいですか』
「え、来るの?」
『今から20分後くらいに着くんで、じゃあ』
「あ、祐く…、」
プーッ、プーッ
電話は一方的に切断され、私はどうしようもなくなってベッドを出た。
「リク 大丈夫かなぁ…」
時計の針ばかり気にしてしまう。ソファに座ってお茶を飲んでも、なんだか落ち着かない。
あと5分くらいかな?
ピンポーン
「…フツーにきた」