君に届ける最後の手紙
俺達二人がグラウンドに着くと、監督も含め、みんながゲンキを温かく迎えた。


「ほれ見ろ。悩む必要なかっただろ?」


「……あぁ……」


そして引退式が始まった。


引退式と言っても、大した事をするわけではない。


みんな一塁側に整列し、合図と同時に思いっきりボールを遠くに投げるというものだ。


しかし実際ボールを手に取り、それを見つめると、様々な思いが浮かび上がる。


入部したてで先輩にしごかれた事。

初めてレギュラーを取った時の事。

数え切れない程の悔し涙……。


そして監督が一言"ありがとう"と言うと、手を高く上げた。これが合図だ。


みんなそれぞれに助走を取り、思い切り良くボールを投げる……。



……飛べ……飛べ!一秒でも長く!



少し使い古されたボールが、真っ青な空に飲み込まれていく。


しかしそれもいつか地面に落ち……


「ありがとうございました!」


皆がグラウンドに向かい深々と頭を下げると、野球部としての生活全てが終わりを告げた。


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