君に届ける最後の手紙
いつか……。
引退式から一週間程たった頃の出来事。


「由〜!アサミちゃんが来てるわよ〜!」


何事かと思い、自宅の階段を駆け降りるとそこには本当にアサミが来ていた。


「どした?なんかあったか?」


「あ、やっぱり忘れてる!アンタって昔からそうだよね!……お母さん。今日からアタシが由ちゃんに勉強教えますから!」


「えっ?由がっ!?勉強っ!!?あんた、アサミちゃんに変な事しないでよっ!」


「しねーよ……」


そうだった。勉強……そう考えるだけで頭が痛くなってきた。


アサミを部屋に入れ、勉強が始まりそうになると、俺はそれをじゃまするように、こう切り出す。


「つーか、ゲンキこの事知ってるのか?」


「なんで?別に言わなくてもいいじゃん」


「いや、お前の彼氏だし言っとかないとアイツ後でうるせーだろ」


「別れたよ。聞いてないの……?」


「……あ……はぁ?!聞いてねーぞ!なんでよ?!」


「あぁ、なんかね、二人で恋人って何だろね?って話してたんだけど、お互い解らなくなっちゃって、じゃ友達でいいんじゃない?って感じ」


予想外だ。と言うより、何て適当なやつらだ。


でもまぁ確かに、結婚やら何やらと考える必要のないこの年頃に、"付き合う"という枠組みは、あまり要らない物なのかもしれない。


何はともあれ、俺の受験戦争は始まったわけだ。


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