君に届ける最後の手紙
その日の夜。


「あ、やべ。入学してから一回も家に電話してない!」


1番忘れちゃいけない事だ。俺は舎監室の前にある公衆電話に急いだ。


トゥルルルル……ガチャッ……


「あ、俺だけど……」


「ちょっとアンタ!母さんどれだけ心配したと思ってんのよ!いつ電話掛かってくるかなぁってずぅっと待って……もしもし!由ちゃん?!アサミだよっ!もう、心配かけないでよ!おばさん淋しそうだったからアタシ毎日泊まって、ここから学校通ってるんだからねっ!」


おいおい……


「それ、自分が泊まりたいだけだろ……うちのメシは旨いとか何とか言ってたし……」


「……んっ……ゴホン!そ、そんな事はどうでもいいの!これからは毎日おばさんに電話するんだよ?!いい?!じゃあねっ!」


ガチャッ!


「あ、あの……入学式の事とか寮生活とか……はぁ、切られた……」


アサミ、あの調子だと頼まなくても俺ん家に居座るな。ま、その方が安心か。


この分なら夏休み前までの寮生活も案外何とかなりそうだ。ま、そうでなくても週末は必ず家に帰るわけだし、俺はこの約半年を楽しんでみるとしよう。


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