Iの漂流戦士




隼人に案内され着いた公園は、住宅街の一角にある小さな公園だった

いつも高木功と話しをする公園より遥かに狭い敷地


遊具もブランコと鉄棒、そして僅かな砂場があるぐらいだ

ベンチのない公園に、唯一座れる場所と言えばブランコの上


二つある内の一つに隼人は座った


ギシッと錆びた鎖がうなり、地面に足が余っている

子供用のブランコなのだから当たり前だ


正義は少々迷ったが、もう一つのブランコに腰を下ろした


(こ、壊れないかな……)


隼人より身長も体型も大きい正義には無理がある

でも不思議と余った足で地面を蹴りたくなってる自分が居た


ブランコなんて数十年振りだけど、

大人になっても自然と漕(こ)ぎたくなってしまうものだな、と染々思っていた


そんな中、隼人がやっと口を開く



『まさか星野さんに会えると思わなかったからびっくりしました』


ブランコの脇にビニール袋を置き、隼人はゆっくりと体を揺らし始めた


“実は隼人の家に向かっていた”とは言えず、

正義は何も返答出来なかった



『……ってもう何年も会ってない感じですけど、まだ半年しか経ってませんでしたね』

そう笑う隼人に正義は問いかけた



『あ、あれからどう………?』


恐る恐るこの言葉を口にした

答えなんてわかっているけど聞かずにはいられない


『……なにも変わってませんよ』

ドクン…と正義の胸が痛くなる



“変わっていない”

そんな一言で地獄に落ちた気分だった



救ったと思っていた

終わったと思っていた

隼人の悩みを解決したと思っていた


だけどやっぱり何にも変わっていなかったのだ






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