Iの漂流戦士
その言葉を聞いて、一馬を掴んでいた高木功の手が離れた
しかしそれは、一馬の気持ちが伝わったからではない
『だけど、兄さん達を繋ぎ止めてるのも過去だろ』
高木功はまっすぐ一馬を見つめている
言っている事はどちらも正しい
だって過去から解放されたら、修達はきっと今の場所にはいられない
『一馬、お前はみんなと一緒に居られなくなってもいいのかよ?』
高木功の言葉が一馬を突き刺す
この質問は今まで何度も何度も、自分自身に問いかけてきた
その答えは毎回同じ
『………いい訳ないでしょ』
一馬は振り絞るように声を出した
『それならなんであんな事を……』
高木功が詰め寄ると、いつも冷静な一馬の表情が変わった
『なんで?じゃぁ聞きますけど、なんで功さんは平気なんですか…?』
『…………』
『修さんが毎晩夢でうなされてる姿、ナノハさんが“あの歌”を口ずさんでる姿、どうして功さんは平気な顔して見れるんですか?』
気付くと一馬の瞳からは涙が溢れていた
考えて、考えて、考えて出した答え
例え離れる事になっても
心の奥にある苦しみをなくしてあげたい
なくして欲しい
きっとそのタイミングが今なんだと思う
これを逃したら
多分、一生苦しいままだ