Iの漂流戦士





“……先生ってさ、今まで一番幸せだった事ってなに?”


修は幸せではなかった

たったの一度も



『…………ッ』

気付くと正義はアパートを見つめながら、拳に力を入れていた


もうどうにもならないと分かっているけど、悔しくて仕方がない


父親を刺した時、自ら命を経った時、修はどんな事を考えていたのだろう


きっとそれは倉木が一番、何千回と考えた事なのかもしれない



理不尽な世界を憎み、殺人鬼となった枝波修


そして、ナノハと一馬


みんなを過去から解放させてあげるには、やっぱり正義も過去を知らなくてはいけない



正義が改めて決意してる中、その様子を黙って見つめる人物が居た


電柱の影から正義を見る瞳は、まさに怒り


『…………』


右手の拳をギュッと握り締めて、今にも爆発しそうな感情を必死に押さえている



みんながそれぞれ動き出す中で“高木功”だけが前に進めずにいた




この先の未来よりも、終わってしまった過去よりも


高木功にとって大事なのは今



変化しようとしている環境に取り残されていく感覚が、無性に怖くて苦しい




だからどんな手を使ってでも



---------------絶対に救わせたりしない。


それが修達にとって残酷な事だとしても





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