Iの漂流戦士
【私立睦八代高校 屋上】
灰色のコンクリートは今日の空と同じ色をしている
今にも雨が降りそうな屋上に生徒は一人も居ない
『嫌だね…この天気』
居るのは少年ただ一人だけ
少年は制服を着ているが、ここの生徒ではない
手すりに手を掛け、誰かを待っている様子だった
暫くして錆び付いた屋上の扉がギィィーと開く
今まで憂鬱そうだった少年の顔が笑顔になった
『授業中なんだろ?大丈夫なのか?』
錆び付いた扉を現れた人物はそっと閉める
『普段真面目にしてるからね。保健室に行くって言ったら予想以上に心配されちゃって家に帰ってもいいんだぞって言われちゃったよ』
誰も見た事のない笑顔で“高木功”が言った
『はは、そっか。それならこんな所で話さなくても良かったんだな』
『……俺は別にどこだっていいけど。急用だったんじゃないの?』
高木功はいつもの姿からは想像出来ない程ペラペラと喋った
『用はないよ。ただ今日はなんとなく……な』
少年の言葉の意味を理解した高木功はスタスタと歩き隣に移動した