「あなたのライバル派遣します！」
序章
「ターゲット発見しました！」

「よし、じゃあさっそく作業に取り掛かるぞ」

　そこは、どこか狭い密閉されたような場所だった。その狭い空間の中で三人の男たちがなにやら忙しげに働いている。

　丸メガネをかけている小柄で小太りの男の前には、なにやらボタンがたくさんついている機械が並べられており、その男の短くて丸っこい指は休むことなくそれらのボタンをバチバチとはじき続けている。

　万年寝癖がついていると思われるボサボサ頭の長身痩躯の男は、ちょうど人が一人は入れるぐらいの大きさのカプセルの横で、そのカプセルに付属している複数の計量メーターを見てはカプセルの横についているバルブを調節するかのように動かしている。

　きっちりと髪の毛を七三に分けた、黒縁メガネをかけた中肉中背の男は、スーパーコンピューターほどの大きさのある機械の前に座りなにやら考え込むように腕を組んでいる。その腕を解いたかと思うと、徐に携帯電話を取り出してなにやら打ち始めた。

　やがて、七三男が折りたたみ式の携帯電話をパタンと閉じたかと思うと、一度その空間が真っ暗闇になり、すぐに壁一面にすえられたモニターに光が灯った。

「今回は、うまくいきますかね？」丸メガネが不安げにモニターを見ながら呟いた。

「そろそろ結果を出さないと、研究費が削られるっすからね」寝癖男が、頭をボリボリと掻きながら眠そうな声を出す。

「それにしても、今回のターゲットも依頼を受けるだけのことはあるな」七三男は、メガネの奥の目を細めてモニターに向けてバカにしたような声を出した。


　モニターの中には、背が高いが猫背気味のせいでどこか卑屈な感じがする冴えない一人の男子高校生の姿が映し出されていた。

　その少年が、何かに気が付いたかのようにポケットを探っている。

　探り当てたその手には、彼が愛用しているのであろう青い携帯電話が握られていた。彼は、その画面を覗き込みながら訝しげな顔をしている。

　それが、このプロジェクトの始まりの合図だった。
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表紙・目次

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