「あなたのライバル派遣します!」
第一章
父親が坂本竜馬を尊敬しているせいで、大人物の名を背負うことになった坂木(さかき)竜馬(りょうま)は、常日頃から注意され続けている猫背をさらに丸めながら足元だけを見て歩いていた。

だいたい、父親が坂本竜馬を好きな理由というのが、維新の立役者だとかその独創的な発想力だとか魅力的な人柄だとかそういったものではなく、単に自分の苗字が坂木であり、坂本と似ているというだけの理由からだ。

そのせいで、もっと名前が似てしまった竜馬は、高校一年になる現在に至るまで、先生たちからはいつも名前を間違えられ、しかも名前に負けないような成果を期待され続けてきた。

だけど、当の竜馬はあまり向上心というものがなく、普通が一番とそう考えているような平凡な少年だった。

まさに、名前負けしているとも言える。

こうなってしまったのも、そもそもその名前のせいなのかもしれない。


その竜馬が、なぜ猫背をさらに丸めてとぼとぼと歩いているかというと一通のメールに起因していた。


今日もいつもと変わらない一日が過ぎていくはず。

そう思っていた竜馬の携帯電話にある一通の見覚えのないアドレスからメールが届いたのは、学校からの帰り道だった。

竜馬は、小心者過ぎる性格のため何事にたいしても細心の注意を払って生活していた。

もちろん、携帯電話を使用する際もあちこちわけもわからないサイトに登録することなどはまずない。

だからこそ、迷惑メールというものは今の今までほぼ皆無に近かった。

しかし、この日は違った。見たこともないアドレスからメールが届いたのだ。
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