「あなたのライバル派遣します！」
「あぁ、それは、あんまりチンタラやってられないからさ」

「はっ？　チンタラって？」

　健はニヤリと笑うだけでそれには答えなかった。

「で、どうする？　やるか？」

「えっと、それは……」

　返答に窮してしまった竜馬に、健は本番までの間に考えておいてくれと言い置いてどこかへ去っていってしまった。


　空はどこまでも果てしなく青くて澄んでいて、その青さが今の竜馬には憎々しく感じられて仕方がなかった。

プログラムは、淡々と進んでいく。進行に従って熱を帯びていく生徒たちと一線を画す形で竜馬は冷静にその様子を眺めているように見えた。

しかし、それは表面上でというだけで、その視線は何も捉えてはいない。

　竜馬の頭の中にあるのは、健と自分の足の速さがどれだけの差があったのかということだけ。

練習のときは、二人の勝敗は五分五分だった。

練習だから、本番ほど真面目に走っていなかったとしてもそれほどこのデータに変化があるとは思えなかった。

「五分……か」

　紺碧の空を見上げれば、いつの間についたのか長い飛行機雲がかかっていた。

端のほうから徐々に薄れていくその様を見ながら、竜馬は口元を引き締めて小さく拳を握った。

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表紙・目次

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