「あなたのライバル派遣します!」


「うわっ!」

「まずいっすね」

「スペアは?」

 慌てたように英が立ち上がると、短い足でもすぐに辿り着いてしまう部屋の最奥に備え付けられているロッカーへと向かった。

しばらく、バタバタと大げさな音を立てていたが、音がやんだかと思うと情けない顔を静かに立っている二人の男に向けた。

「どうやら、忘れたみたいです」

「あらら。ホントにまずいっすね」

「……修理にはどれくらい時間がかかる」

 眉がこれ以上さがらないくらいさがっていたものをさらに下げるようにすると英は首を振った。

「実際の状況を見てみないことには……」

「そうか。冠、回収に行ってくれ」

「えっ? いいんっすか? ターゲットのデータを取る以外ここから出てはいけない規則になってたはずっすけど」

「仕方がない。今は緊急事態だ」

「……了解っす」

 冠は肩を竦めると部屋の四分の一を占める円筒形の筒へと向かい、その中へと入っていった。

その様子を見送りながら、今は何も映していない大型モニターに視線を向けて、轟は深いため息をついた。

< 39 / 47 >

この作品をシェア

pagetop